上毛新聞に掲載された顎関節関連記事(オピニオン21)視点#3
2025/06/23

上毛新聞に以前掲載された記事です。全7回ありますのでHP上でも閲覧できるようにしました。お時間あればご一読ください。
一旦壊れてしまった夫婦関係は例え修復できたとしても元の形には戻らない。その代わりそこには新たなバランスが構築される。これはある意味適応であり、ある意味変化である。思うに世のバランスはほとんどが「結果的な釣り合い」から成り立っているのではないだろうか。そして身体も例外ではない。今回はそんなバランスの話。
ジェンガに例えてみる。①ゲーム開始前は完璧にまっすぐ建っている、②ゲーム進行に従い徐々に歪んでくる、③ぐらつきが増してきしみだす、④アンバランスに耐え切れず崩れる、このゲームはゆがみを補正しないと建っていられないのが特徴だが、実はこれは様々な物に当てはまる。当然人間でも同じことがいえる。これを人に当てはめると①は健常、②は疲労、③は通院、④は入院、となる。そして現代人のほとんどが②であり、③には歯科医院や全身施術院が必要となる。このアンバランスさが引き起こした二つの症例を挙げる。
虫歯がしみて水が飲めないという70代男性。でも虫歯は見当たらない。その代わり歯がすり減っており頬と舌には噛み傷がある。しみる歯を人工物で覆ったり薬を塗ったりしても変化しないので、食いしばりの疑いがあると説明して首と肩を施術した。すると冷水痛が半減したので全身をみると、腰痛がひどかったので腰を施術した。その結果3回で冷水痛が完治した。歯や噛み合わせはそれだけデリケートなのである。
下痢や腹痛を伴って食が細くなり全身倦怠感を訴えた40代女性。内科受診では疲労ではないかとのことで投薬を受けたが改善しなかった。施術時に強い口臭を感じたので、口をみてみたら重度の歯周病だった。聞くと数年前に歯科医院で歯周病治療を勧められたのだが、どうしても踏み切れないまま今日に至ったそうだ。よく説明をして食べられるように治療したところ、食欲が回復し見違えるように体調が改善した。口は食物の入り口なのでそこでかみ砕けなければ自ずと体調も悪くなるのである。
この二症例で考えるべきポイントは、歯と身体は良くも悪くも互いに影響し合う関係なのだということだ。つまりどちらか一方が破綻するともう一方も関連して悪くなることがあるのだ。まさにバランスなのである。このバランスが崩れる前には、腰痛にしろ歯周病にしろなんらかのサインがある事が多い。そのサインを見落とさずに気を付ける事が大切である。
夫婦間でも同じことがいえる。影響し合う間柄だからこそお互いをいたわる気持ちが重要なのである。それは自分の心のバランスが崩れると相手の心のバランスも崩れてしまうからではないだろうか。相手の小さなサインを見逃さないようにしたいものだ。身体も伴侶もいたわりが必要なのである。